平成31(2019)年度 東大ロー 既修者 筆記試験
法律科目問題 1 刑事系 刑法
例年、東大ローは試験時間がくるまで、刑事系、公法系、民事系のうち、どれが来るかが分かりませんでした。
しかし、今年は、すでに第1次試験(書類審査)の時点でどの順番で試験が行われるかが発表されていました。これが今までの違っていた部分かもしれない。
で、複数回に分けて当日の答案構成をアップロードしていきたいと思います。
正直、刑事系が一番後悔が残りました。全然考察が足りず、落ちるとしたらこれが一番の原因なんだろうなと。
問題文は、著作権の関係上アップロードできませんので、あくまでも答案構成までにしたいと思います。
1.Xの罪責
(1)Xの窃盗罪
・X自身は実際に窃取をしていない。そこで、Xが実行行為を行ったかが問題となる。
・実行行為とは、特定の構成要件に該当する法益侵害の現実的危険性を有する行為をいう。そして、自らの犯罪を実現する目的で他人を道具として一方的に利用する場合も実行行為たり得る。
・Xは、自らの犯罪の実現のためにYを利用している。そして、甲のリーダーであり、甲は命令に従わなければ制裁を受ける恐れがあった。そのため、XはYを自らの道具として一方的に利用する関係にあった。
・よって、XのYを利用する行為は窃盗罪の実行行為たり得る。
・もっとも、窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要。ここで、不法領得の意思とは、他人の占有を排除し、自らの所有物として振る舞う意思、そしてその財物の経済的用法に従って利用処分する意思を有している必要がある。
・甲自身は経済的用法に従って利用処分する意思を有していなかった。
・しかし、Yが「Xが売り払ってしまうであろう」と考えているとXは知っていたがこれを訂正しなかったのであるから、未必的に不法領得の意思があったと言える。
・以上より、Xの行為には窃盗罪が成立する。
2.Yの罪責
(1)Yの窃盗罪
・Y自身の窃盗行為が、窃盗罪に当たるかが問題となる。
・Y自身は窃取している以上、実行行為もあり、構成要件を満たす。
・もっとも、Yは窃盗行為を行わなければ暴行等の制裁を受ける恐れがあったのであり、期待可能性がなかったと言え、責任が阻却される。
・以上より、Yの行為に窃盗罪は成立しない。
(2)Yの器物損壊罪
・もっとも、Y自身は、チェーンロックを破壊している。そのため、器物損壊罪の構成要件を満たし、その他阻却する事由もないから、Yには器物損壊罪が成立する。
以上です。
正直、終わってから答案を思い返して、なんてひどい答案なんだ、と凄くへこみました。
そもそも、回答欄の1マス1字を記入すること、なんてことも全然守っていませんでした。(最後の行なんて詰め込みすぎてなんて書いてあるか読めたのか?っていうレベルでした。)
こんな低レベルな答案でも合格をいただけたというのは本当に奇跡だと思っています。
特に、Yの罪責についての検討不足がひどい。そして器物損壊罪のとってつけた感。
具体的な時間感覚としては、問題文を読むのに3分、答案構成に5分、実際に書き上げるのに20分でした。そして、その時点ではYの器物損壊罪も全く触れていませんでした。
明らかに検討も足りないし答案内容も訳分からないことを書いているし、これ本当に大丈夫か?なんて焦りながらも、とりあえず刑事訴訟法の問題をやろうと思い筆を進めました。
最終的に15分ほど時間が余ってしまい、手持ち無沙汰になってしまったため、器物損壊罪だけでも触れておこう!だめだったらだめなときだ!という考えのもと、最後の行に「○と○の間に以下を挿入する。」なんて、覚書を作るときのテクニックを駆使して入れ込みました。
これで点をいただけていたのかがとても不安。
この部分については、点数開示で明らかにしていきたいと思います。
以上、こんな不出来な答案でも合格もらえるんだ、っていうことで希望を与えることでしか役に立たない答案構成ですが、参考までにあげます。
返戻金の闇
新しい会社に来て、契約書レビューで見ることが多くなったのが、人材紹介基本契約書。
今までの会社では人事系の契約書は人事管轄で交渉して見ていたみたいだから、ノータッチで、経験していないこともたくさん。
分野の特徴で分からなくもないが、基本的に採用が決まってから初めて基本契約書が送られてくる。採用も固まった後だから、人事からは「なるはや、ASAP」で、なんて日常茶飯事。
ただ、この契約書でよく見かけるのが「返戻金」制度。よく揉めています。
そもそも、人材紹介の手数料は、成功報酬がスタンダード。たまーに、定額制の人材紹介も見るけど、基本はこれ。そして成功報酬の額も年収の何割、なんてもってっちゃうから1回の採用に70~80万かかるなんてザラ。
昨今の売り手市場でも新卒市場で特徴的だけど(新卒採用の場合の手数料っていくらなんだろう)、入社してすぐに辞めちゃった、なんて、転職した後でもよくある話。
(私も辞めたいだなんていえない・・・。)
入社してすぐに辞めちゃった。でも人材紹介は一応”成功”しているから、人材紹介手数料支払ってくださいね~って。
だからといって、採用する側からすれば、すぐに辞めちゃう人を紹介して人材紹介手数料だけふんだくるってどういうこと?って憤りしか感じない。
だからこそ、そんなときには、採用側からすれば、人材紹介手数料を返還してよ~、っていいたくなる。一方で、人材紹介会社からすれば、一度紹介した人が辞めたかどうかなんて、その人次第の部分が大きいから、人材紹介手数料の返還すなわち自分の会社の利益の放出なんて認められない。
このよく揉める「返戻金」。
とはいえ、採用も決まっている以上、法務がNOだしても人事側でOKなのでそれで進めました。なんてことが常で、議論のお預けを食らっているような状況。
私個人として、人材紹介を業務としてお願いして対価を支払う以上は、中途半端な人ではなく、こちらの要望にあう精度の高い紹介をしてほしいし、その義務があるのではないかと考えている。
そのためにも、人材紹介手数料として高めの金額を支払っているのだから。
そして、厚生労働省も、人材紹介手数料の返戻金について定めるよう推奨をしている。
一方で、相手方の考えとしては、先に述べたとおり、人材が辞めるなんて人材紹介会社にとっても責任はない、ということでしょう。ほかにも、採用するか否かは自己責任であってその点も含めて確認するかは採用者側の都合でしょ。と。
結局、落としどころはどこなのか。定めたとして逓減率はどうするのか、という問題もまだまだ残っている。
契約書一つの条項にここまで考えさせられる要素があるから、契約書は難しい・・・。